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校長ブログ

2018年04月24日(火) 大学入試:教科横断的なアプローチ、京都大学特色入試(英語)

 大学入試改革と言えば、高1生が受験する「大学入試センター試験」に代わる「大学入学共通テスト」がクローズ・アップされますが、教科科目を基盤とした"1つの正解"を求める1点刻みの設問から教科横断的なアプローチ、次期学習指導要領で言えば、近現代の日本史と世界史を学ぶ「歴史総合」や数学と理科にまたがる「理数探究」といった次元の設問がすでに大学入試に登場しています。

 日本史と世界史を融合した例で言えば、2014年のセンター試験の日本史が挙げられます。そこでは手塚治虫の自伝的作品「紙の砦」がとりあげられ、同氏の少年時代の歩みと戦時中、軍需工場で漫画を描く場面を紹介、近現代史とのつながりの中で歴史的事実を考えさせようとしています。

 本校では、このような新傾向に対応するだけでなく、全体の授業力強化や業務の効率化に向けて、既存の部や委員会をスクラップ&ビルドしました。まず、学校としての説明責任を担い、学年や担任の学習指導・進路指導をコーディネート、生徒個々の夢の実現をサポートするカリキュラム・マネジメント委員会(校長=委員長)を組織化しました。また、教員個々の授業力のブラッシュ・アップをお手伝いする研究開発部を新設。さらに、時代の要請に即応した教育を実践していくために、グローバル教育推進委員会、理数教育推進委員会、ICT教育推進委員会等に再編しました。部門別リーダーにあたる部長、委員長には学園の基本構想と学校目標に基づく年間到達ラインと具体策をお願いし、OJTとOff-JTをバランスよく使い分けるよう依頼してあります。この度、研究開発部が「研究開発通信」を作成し、『探究総合』(高1)の情報共有を行ってくれましたので紹介します。

Kenkyu.jpg 以下に、『大学ジャーナル』(vol.121、9月号、P15、2016.9.15)に寄稿した「京都大学特色入試[英語]瞥見-教科横断型テスティングのプロトタイプ-」から同社の許可を得て、一部抜粋しますので参考にしてください。

 文学部は、食を巡る哲学的考察を通じて、共有された時空間における相互承認・理解に関する国内外からのアプローチに対して、それぞれ筆者の主張を400字以内でまとめ、さらに食べるという行為が人間にとって持つ意味をどう考えるのか、二つの文章をふまえて800字以内で記述するものとなっている。テクストの意味を他のテクストとの関連によって見つけ出そうとする間テクスト性(Intertextuality)の視点が想起される。サンプル問題(vol.116 平井参照)は幸福論であったが、日英語の課題文を精読し、他者との視点の違いをおさえ、自らの意見を論理的に組み立てられるかどうかというエッセンスは一貫している。

 法学部(100点)は、ソーシャル・タイラニー(社会の専制)に対抗する自由について、日本の法学者が書いた文章を読み、問1ではその具体例を300字程度で記述する。次にその論点もふまえつつ、問2では邦訳されたインターネットにおける変化としてのウェブ・パーソナライゼーションに関する文章と英語で書かれたその書評2編を読み、個人の自由について1,200字程度で述べるというもの。サンプル問題は「平等への想像力」であったが、文学部同様、日英語の読解力、論理的思考力、表現力を測る傾向に変化はない。

 教育学部(100点)は、青少年の非行や薬物乱用について、6種類の国内外資料を参考にしながら3つの設問に対して記述する。設問1は英文読解であり、集団非行に関する英文を読んで、和訳と600字以内の和文要約(30点)であった。その他、薬物乱用で送致された未成年者数減についての所見(40点)を述べ、自律的な規範意識の醸成に向けての意見(30点)をまとめるものになっている。サンプル問題は、子どもの遊びのための制度設計をテーマとする英文であり、資料を読み、自分の意見を述べるところは共通であったが、要約問題の字数が400字以内で200字少なかった。

 医学部人間健康科学科(100点)は、電子機器やテレビゲームやコンピューターゲームといった電子ゲームが子供の発達に及ぼす影響について述べた英文2編を読み、要旨をそれぞれ300字以内でまとめ、さらに低年齢からスマートフォンやiPad等の電子機器に触れることについて所見を述べるものになっており、配点は35点。サンプル問題は自閉症スペクトラム障害であり、日本文を読み、自らの考えを記述するという設定であったが今回は英文を読んで答える形になった。しかし、医療を専門とする仕事を志す受験生の問題発見、解決能力を測る点はより鮮明になっている。

 薬学部薬科学科は英文読解2題(200点)である。1題はレチノイン酸及びレチナールの生体内での役割、夜盲症の予防や治療への効果、構造式、反応装置の図示、純粋化合物の計算等。もう1題は酵素反応に関する英文であり、仮定が成立する条件、数式、結果説明、理由説明、模式図選択、内容一致等が問われている。サンプル問題はGrignard反応剤が主題であったが、2つの英文を読み、その内容に関する設問に答える形式は同じである。医学部や薬学部の英文素材はかなり洗練されており、理系の生徒にとって読み応えのある、背景知識を鍛えるには好個の言語材料であることもまた事実。問題提起→仮説→検証→結論というコンテクストや実験結果を表す表現はおさえておきたい。

 農学部食料・環境経済学科も英文読解2題(200点)である。1題(100点)は政府がバイオエネルギーを利用推進する理由、エタノール比率推移の説明や面積計算、バイオ燃料と食料生産の競合による社会的影響を述べさせるものであり、もう1題(100点)が囚人のジレンマを扱う素材となっている。サンプル問題は、資源を確保の際の不平等と増加傾向にある原油生産であったが、2本の英文記事を読み、答える形式は踏襲されている。

  高校で学ぶ教科・科目をベースにした分析力、俯瞰力、活用力とは言うものの、課題文も設問も分野によっては個別試験以上に難易度が高い。特定分野で卓越した能力を持つ学生を採るというアドミッション・ポリシーを満たすには「学びの設計書」はじめ、筆記試験には相応の記述力、面接には論理的思考力に基づく相応の表現力が不可欠である。英語学習で言えば、西洋の典型的な思考法である二項対立的発想の文脈論理とともに、以下の4技能習熟がポイントとなろう。 

 ①Reading:専門分野に関する原書や論文,英字新聞などを精読,速読できる力 
 ②Writing:エッセイを論理的な英語で書ける力 
 ③Speaking:課題発見,解決に向けて自分の考えを英語で述べる力 
 ④Listening:レクチャー,ディスカッションを理解できる力 

 知識基盤社会の中、経済のグローバル化や人工知能などの技術革新に伴う労働力構造変化によって専門職への需要が高まっている。現在、画一性、規律性を主とした教育ではなく、個性を重視し、生涯を通して知識・技術を学んでいける基礎を育む教育が求められている。特色入試を見る限り、この点に焦点をあてた教科横断型テスティングのプロトタイプになっているように思われる。

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