学校生活

【はつとんWeekly】 校長室より(4)

「夏休みの読書」

 森鴎外は、アンデルセンの『即興詩人』という本を翻訳しています。しかし、この翻訳は雅文体で書かれたもので、アンデルセンの原文を大切にしたものというよりは、その物語を森鴎外の言葉で再構成したような文のようです。文体が美しく、翻訳が原作を超えていると言われるほどの出来栄えらしいのですが、言文一致世代には、雅文体は読むのに難しく、しかもかなりの長編のため、私も手に取ることを躊躇している本です。ただ、多くの人が無人島に持っていくならこの1冊として挙げている本でもあり、一度はチャレンジしたいと思っています。

Ogai.jpg 森鴎外と同じ故郷(津和野)に生まれ、小さなノーベル賞ともいわれる国際アンデルセン賞を受賞している安野光雅が、「森鴎外の即興詩人を読んで欲しい」という思いを込めて、口語訳を出版しています。この夏休み、私はまず、この安野光雅の口語訳『即興詩人』を読んでみました。イタリアの美しい自然、様々な都市の文化と風習、それらを舞台に青年の恋や葛藤がロマンティックに綴られています。話の展開は決して自然なものではないと思うのですが、物語が持っている雰囲気がぐいぐいと読書することを引っ張ってくれ、青春の輝きや翳りを思いながら、ゆったりとした時間を過ごしている心地よさとで、気が付いたら数日で読み終えていました。

 読書は、さまざまな考えや人に出会ったり、行ったことのないところの様子を知ったり、体験したことのない事柄や地位を味わったり、人生での大切な教訓を得たり、時間を超えたりなど、得るものの多い価値あるものだと思います。そして、この本もやはりそういったことはたくさんあったのですが、何より楽しかった。そしてきっと、またその世界に入り込みたくなる。そういう雰囲気の本でした。よく、文学作品とは再読に耐えうるものだと言います。まさに再読を約束したくなるような本でした。

 2学期が始まります。
 日々の学びと日々の読書。"何かのために"ということもありますが、そのこと自体を楽しんで欲しいなぁと思っています。

最新トピックスへ
お知らせ
変わるはつとんCHANGE 詳しくはこちら