学校生活

はつとんweekly⑦(校長室より) 藤井聡太さん

将棋界には、8大タイトルがある。それらは、賞金と歴史によって序列があるようで、竜王(りゅうおう)・名人(めいじん)・王位(おうい)・叡王(えいおう)・王座(おうざ)・棋王(きおう)・王将(おうしょう)・棋聖(きせい)がその順とされている。今回、藤井聡太さんが史上初の全8タイトル制覇を達成された。そのインタビューでの返答を聞いて、この年齢でこの域に人は達することができるのだと驚いた。

「苦しい対局だった。結果は幸いしたが、経験を糧にしたい。8冠に見合った力はまだまだなので、引き続き実力を付けていく必要があると思う」

「より実力を高め、より内容のよい将棋を指せることを目標にしたい。指していて面白いと思えること、見ている人にも面白いと思ってもらえること、その二つを大事にしたい」

名実ともに、将棋界の最高峰に登り詰めたと我々は認識しているのに、藤井さんの見えている景色はどうも違うようである。話しぶりや、言葉の使い方から、謙遜するべきという忖度による返答ではなく、冷静に自分を見つめ、自分の置かれている状況を把握した返答に感じる。しかも、見ている人を楽しませるためのエンターテイメントな部分まで意識している。明らかに、周りを思いつつ自分の世界を楽しんでいる。 

「子供の頃から教えてもらい、支えてくれた人に良い報告ができ、恩返しにもなった」

師弟関係は美しい。弟子は成長し、師を超える時もある。それでも師は師としての立場を保ち、弟子は弟子としての姿勢を崩さない。そこに引かれた境界は公正さを保つために超えないのではない。超えることが彼らそれぞれの世界を崩すことを理解しているから大切にしている。

 インタビュー以外に、ネット上に載っていた山中伸弥教授との対談では次のような言葉が出ていた。

「ひらめきみたいなものは、今までのパターン化されたものの外にあると思うので、それを意識して鍛えられるかどうかは、けっこう難しいような気もします。自分の場合、発想よりも形勢判断の部分を今は重視しているので、あまり人と違う発想をしようとは思ってないです。」

誰もがあっと驚く、逆転の一手を打つ藤井さんが、「発想より形勢判断」を大切にしているという。傍から見れば発想のように見えるものも、たゆまぬ努力でつかんだ藤井さんにしか見えない形勢があるのだと思う。つまり、それほどの努力を藤井さんはしているという証である。

同時代にこのような天賦の才を持った人を見ることができ感動するとともに、教えられることの多い素敵なニュースだった。

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