入試トピック

子どもに学ぶ(その2)

 時間があるときは、クラス巡回をしています。コロナの影響で2ヶ月を自宅で過ごした子どもたちでしたが、今ではすっかり新しいクラスに慣れて笑顔もたくさん見ることができています。ある日、2年の教室を覗くと国語の授業中。【こんなもの、みつけたよ】の単元を学習していました。自分が発見したもの(こと)を、他の人に伝えるという学習です。一人の子が「先生、ぼくなひとつ見つけたものがあるねんけど、それが何かわからんねん」と言って、私に聴いてくるのです。「そうか、それやったら先生が一緒に見に行ったるよ。何かなあ」と言って見に行きました。それは、虹の階段から少し坂を下った高校棟のすぐ側の鑑賞木でした。その植物から見える花のようなものを指さして「あれな、トウモロコシみたいに見えるけど...、違うよなあ」というのです。確かにトウモロコシではありませんがよく似ているのも事実です。「先生も、すぐにはわからないなあ。調べるから少し時間をちょうだい」と言って、その時は分かれました。

 その後、図書室で調べてみると"ソテツ"であることが判明。トウモロコシのように見えたものは雄花でした。これだ!と私は嬉しくなって、彼の所に行き、図鑑を見せるとニッコリ。「これや、先生、これやなあ」と彼の目が輝き、声のトーンが上がりました。他の子がどんどん完成していた中で、よくやく自分の探していたものがわかり、彼の報告したいことが具体化され、白紙だった用紙に次々と文字が埋まっていきました。図鑑を見ては、用紙に書き込むその姿を私は見ているだけで充分でした。ワークシートが完成するのにそれほどの時間は必要ありませんでした。彼は勇んで担任にワークシートを見せに行きました。

 「子どもにやる気スイッチが入るのは、自ら課題を見つけ、その解や解法がわかった時」と言うことを彼が目の前で体現してくれています。教師は、一人ひとりのやる気スイッチを入れるために様々なアプローチをします。課題の選択が大事なことはもちろん、課題に対峙する子どもを見取り、そして子ども同士の関わり方を教師はじっと見つめます。スイッチを入れるのは常に自分だけでなく、周りの子どもによってスイッチが入ることもあります。聴くと言うことを大切にした子どもと子どもの関係づくりが大切です。学び合う学びが広がるとき、それが学びのスイッチが入ったときです。教師が一方的にスイッチを入れようとしても、本物の学びにはつながらないことを、彼の姿から改めて学びました。

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